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PRODUCTION NOTES

実録・河合組潜入! 映画『ニセコイ』ができるまで

「オイ、河合組って聞いたことのねぇ組があの「ニセコイ」を実写映画化するらしいぜ。テメェ、河合組に潜入してちゃんとオモロイ映画になるのか調べてこい!」
若頭の竜之介兄ぃに命じられ、集英組に入って数ヶ月のオイラが河合組に潜入。その様子を報告させていただきやす!

  • 『ニセコイ』プロジェクト
    〜誰も見たことがない作品へ〜

    「週刊少年ジャンプ」連載中だったコミックを読んだ平野隆プロデューサーは、とにもかくにも非常にブッ飛んだ作品だと感じたそう。敵対するヤクザの二代目とギャングのお嬢が偽物の恋人同士になるという奇想天外すぎる設定は、これまでの漫画や映画でも読んだことや観たことがなかったと感嘆。そして、このハチャメチャ感を徹底的に打ち出して実写映画化することで、青春ラブコメ映画というジャンルに新たな風を吹き込むチャレンジにもなると確信した。だが、原作は2011年から2016年の5年間にわたって連載され、単行本は全25巻とかなりの大作である。しかも、魅惑の女性キャラクターが次々と登場する“ハーレム漫画”でもある。そこで数あるキャラクターから誰をフィーチャーするのか、楽と千棘のふたりを主軸に物語を進めるのか、そこに小咲も入れて三角関係をメインに展開するべきかなどを一年間に渡って熟考。その果てに出来上がった渾身のプロットとコンセプトを受け取った原作者・古味直志は「やるからには楽しんでやってください!」とOKを出した。その言葉を受けた制作チームは、原作同様ストーリーもキャラもなにもかもを振り切った作品にすべく“やるなら、とことんやっちまいます!”を合言葉にプロジェクトを始動させた!

    俺ら集英組も“殺るなら、殺っちまえ”がモットーみたいなとこがありやすから、とっても共感したっス!

  • キャスティング

    累計1200万部突破の超人気作だけに、原作の熱狂的ファンは多い。だからこそ主人公である一条楽と桐崎千棘のキャスティングは彼らも納得できるものにしなければならない。そんなミッションを遂行できる俳優として平野Pの頭に当初から浮かんでいたのが『銀の匙 Silver Spoon』 (2014年)でタッグを組んだ中島健人だった。「ピュアで飾りっ気がなくて、役者以前に一人の人間として惹かれたんですよ。役者としてもストイックで、その気合いみたいなものがスタッフにも伝わって皆も彼のために頑張ろうって思ってしまう。熱くてイイ奴という部分が楽にも被る」と、その理由を語る。一方、難航したのが千棘。「ハーフで金髪で目が青い女優なんて日本にいない」と悩むなか、目に飛び込んできたのは『ニセコイ』プロジェクト始動期に企画プロデュースを手掛けていた『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年)に出演していた中条あやみ。「灯台下暗しだよね(笑)。誰もが認める美人で、なんといってもハーフだし。金髪にしたら完全に千棘。しかも『チア☆ダン〜』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しているから演技も問題ない。女優としてさらに育つのを見たい」とオファー。辻本珠子プロデューサーも「見た目とは違った、大阪出身ならではのサバサバした言動と、その割に乙女な性格が千棘にピッタリ」だと平野Pの判断に太鼓判を押した。対する中島は以前から抱いていた「いつか映画で思い切りふざけてみたかった」という想いがこの作品ならば叶えられると快諾、中条も制作チームから寄せられた期待に応えたいとこれまた快諾。作り手も演じ手も納得できるキャスティングと相成った。

    坊っちゃんには“キラキラ王子”、お相手となるお嬢には“清純派”! ブレた配役だったら殴り込みする覚悟でしたが、このふたりなら満足でさぁ!

  • クランクイン
    〜ようこそニセコイの世界へ〜

    なにもかもがブッ飛んで振り切っている『ニセコイ』の世界。それを実写で具現するには美術が大きな鍵を握ると早くから確信していた制作チームが、プロジェクトが動き出すや真っ先に連絡を取ったのが美術・林田裕至だった。平野Pは企画プロデュースを努めた『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017年)でも林田に美術を依頼しており、「ハリウッド的スケールで本当に美しい世界を創造できるセンスを持っている」と絶賛。平野Pたちが彼にリクエストしたのは「異世界を作ってほしい」の一言だけ。そして作り上げられたのは、ひたすらゴージャスでエレガントでファンタスティックな世界! 楽の家でもある集英組は、明治時代に建てられた迎賓館である群馬県前橋市の臨江閣を飾り込んだ。門には巨大な表札と竜の飾り瓦、廊下や楽の部屋には金屏風、虎の絨毯、竜を描いた墨絵と、国の重要文化財をここまでしてもいいのかというほどイジりまくっている。千棘の部屋も、真っピンクがベースの家具や調度品が置かれ、天井には煌めくシャンデリアというデコデコを極めたものに。また、凡矢理高校の教室は日本大学三島高等学校・中学校を借り、教室の壁や天井にパステルカラーの壁紙を貼ってカラフル全開に。美術も“やるなら、やっちまえ”の精神で、非現実の世界を現実にしてしまったのだ!

    坊っちゃんの部屋として使わせていただいた臨江閣の大広間、どう考えても150畳はありやしたぜ。ホントにあれが坊っちゃんの部屋だったら、掃除が大変そうでちょいと面倒臭そうだなぁって思いやした……。

  • W主演 中島健人&中条あやみの心意気

    中島健人と中条あやみもスタッフ同様、“やるなら、やっちまえ”の心意気で撮影に臨んだ。元々、原作のファンだった中島は、“もやし”と呼ばれつつも意外と引き締まった楽の細身のボディをしっかりと再現すべく、食事制限を敢行。クランクイン前に行われたSexy Zoneの全国ツアーに単行本全25巻とアニメのDVDを携え、少しでも空いた時間にそれらをチェックしてはコマのひとつひとつや楽の表情をはじめとする所作を頭に叩き込んで、原作の楽に少しでも近付こうとした。一方の中条は、千棘を演じる気持ちを固めるため、より原作通りの容姿に近づくために金髪に染めることを決意。千棘が楽にハイジャンプで膝蹴りをくらわせる出会いのシーンでは、トム・クルーズよろしく十数メートルの高さをクレーンで吊られるという撮影に挑み、スタントマンがやる予定だった側転もこなした。ある日はプールに飛び込んだり、ある日は肝試しを最前線で楽しんだり、ある日は空港を猛ダッシュしたり、日々撮影の内容が180度変わっていく現場のごった煮感に、中島と中条は気合いでくらいついていく。そんなふたりのガッツが最も炸裂したのが変顔。ここまで人間の顔は歪んで伸びるものなのかと唖然となるほどの変顔を繰り出し、1カット撮るたびに変顔がより映えるよう顔の角度を調整するなど河合監督と詰める。コメディ演技に開花したのは間違いないが、ロケ取材に来た取材陣からはファンが減る心配はないのかという質問も。それに対して中島は「キラキラ王子のイメージを持っているファンは僕のこと嫌いになるかも。でも、その覚悟で楽を演じています」とキッパリ!

    変顔のみならずタライ落としにも挑むケンティー、これでもかと目ん玉を剥くあやみちゃん……。なにもかも捨てる覚悟で挑むふたりは只者じゃありやせん。竜兄ぃ、ウチの組にスカウトしませんか?

  • さらに物語を彩る超個性的なキャスト陣

    登場する誰もがクセのある『ニセコイ』ゆえに主人公以外のキャスティングにも制作チームは奔走。小野寺小咲は並外れた純情可憐さを醸す女優であることが必須条件となるが、なかなか見つからない。そんななか、あるアーティストのミュージックビデオに主演していた池間夏海をチームの一人が発見。その姿を見るや平野Pや河合監督以下男性陣が「可愛い!」と騒然、沖縄在住の彼女を東京に招いてみると演技も堂に入っているとこれまた騒然に。舞子集は「頭にチラついてしょうがない」という河合監督の猛烈な推しで、「黒崎くんの言いなりになんてならない」(2015年)で監督の作品に出演した岸優太に決定。台本にない台詞をアドリブで連発、それがことごとく採用されるなどして現場を盛り上げるのを目の当たりにした辻本Pは「監督が推すだけのことはあった」と納得&感嘆。橘万里花には島崎遥香。辻本Pが「スーパーサラリーマン左江内氏」(2017年)などで見せたコミカルな演技に惹かれての起用。自ら髪をオレンジ色に染めてきて原作もアニメも完全網羅、監督に「万里花はこんな語尾で話しません」などビシバシと指摘、身も心も万里花になり切っていた。そしてクロードにはDAIGO。飄々としていて、どこか怪しくて、そこはかとなくクールなDAIGOはクロードに重なると直感。銀髪のカツラとグレーのコンタクトに銀縁眼鏡、そして拳銃を構える姿はどう見てもクロード! DAIGO本人も「SST=(S)その(S)選択は(T)正しい」とキャスティングを自画自賛する結果に。

    いやぁ、どなたも見事なハマりぶり! DAIGOはガチでクロードすぎて、ついついドスを抜きそうになりやした!

  • 原作者・古味直志先生が現場来訪

    水戸の旧茨城県庁舎でのロケを古味先生が見学に。映画の撮影現場は初めてという先生は、庁舎の門に掲げられた重厚な凡矢理高校の表札に見入って「この校名は5分くらいで考えた代物なので、嬉しいような申し訳ないような……」としみじみ。照明、カメラ、メイクをはじめとするスタッフの数の多さ、彼らが監督の指示を聞いて一斉に動き出す姿に圧倒されると共に「作品を良いものにしようとチームワークを発揮して突き進む点やアットホームな雰囲気は漫画の現場と通じるところがある」と感慨深い様子。監督や中島健人、中条あやみらキャストとも談笑し、中島健人がぶつけまくる“ニセコイ愛”のあまりの深さにも驚く一幕も。

  • ブロードウェイやハリウッドも顔負け!?

    学園祭ミュージカル『ロミオとジュリエット』 2018年5月28日。クライマックスとなる学園祭舞台劇『ロミオとジュリエット』のパートが東宝スタジオNo.8ステージで撮影された。1415平方メートルと日本最大の広さを誇る同スタジオの中央に組まれた『ロミオとジュリエット』のステージは、すべてがステンドグラスで作られたような階段式の構造となっており、幻想的に輝いている。

    観客役として参加したエキストラも水戸に続いて見学に訪れた古味先生も、その“異世界”的風景にたちまち魅了された。そしてロミオ役の楽とジュリエット役の千棘が愛を誓う場面で自分たちの想いを改めて噛みしめるさまを圧巻の演技で表現する中島と中条。撮影終了後はエキストラもスタッフもスタンディング・オベーションを送り、その場にいた誰もが本作の成功を確信した。そして極めつけに、本編を彩る音楽たちもブッ飛んでいるという噂が! 髙見優率いる音楽チームが、ポップス、ロック、テクノ、サンバ、演歌、韓流、そして海外からスタッフを招聘して完成させたファンタジックでゴージャスなクラシックなどなど、ジャンルレスな楽曲を数えきれないほど創りあげたらしい。さらには主題歌アーティストであるヤバイTシャツ屋さんの楽曲「KOKYAKU満足度1位」も劇中に使用されるというブッ飛びっぷり! 攻めた音楽たちが役者たちの振り切った演技をサポートしているのだ!

    『ニセコイ』を傑作にせんと奮闘する河合組の姿に、本気で胸を打たれやした……。竜兄ぃ、オイラ集英組を抜けて河合組に入ってもいいっスか?

  • (文・平田裕介)
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